ZEHのメリットとデメリット

自分の家で使うエネルギーは自分の家で補うことを目的とした住宅ZEHは、まだそれほど普及していません。しかし、資源のない国である日本においては、家庭での消費エネルギーを減らすことは、多くの人が考えなくてはいけない課題です。

ZEHはまだスタートしたばかりの制度で、多くの人になじみがありません。その為、省エネを実行できる生活をしたいと考えていても、新築に家にZEHを取り入れることを決める為の判断材料がありません。新築に家にZEHを取り入れた場合の、メリットやデメリットも含めてZEHについて考えてみましょう。

ZEHとは

ZEHとは、住宅の断熱性能、省エネ設備機器、HEMS、太陽光発電システム等を組み合わせて、家庭で使うエネルギーを家庭で作り出す家のことです。使うエネルギーの分だけ家庭でエネルギーを作り出せれば、家庭でのエネルギー消費量は0になるという考えです。

♦ 断熱性能とは? 屋根、壁、窓、床などの家の外側の部分から出入りする熱量を少なくする性能のことです。熱の出入りが少なければ、冷暖房の効率がよくなり、省エネを実行できます。屋根、壁、床に使われる断熱材や窓の性能、住宅の基礎工事の違いなどによって断熱性能は変わります。

♦ 省エネ設備機器とは? 家庭用燃料電池システム、定置用リチウムイオン蓄電システムなど、一般社団法人環境共創イニシアチブが登録している省エネのための家庭用設備です。

♦ HEMSとは?家庭で使われたエネルギーの量を確認しやすくする、無駄なエネルギーが使われないよう自動的に電力をオンオフするなど実現するシステムです。

♦ 住宅用太陽光発電システムとは? 屋根に設置したパネルで太陽光を集め電気を作るシステムです。作られた電機は、パワーコンディショナで変換され、家庭用の電力となります。電力が余れば売ることもできます。

 

ZEHの住宅を建てるためには

新築住宅をZEHにする為には、定められた条件を満たす必要があります。具体的にZEHに必要な条件を確認しておきましょう。

♦ 断熱性 外⽪平均熱貫流率(UA値)が、地域ごとに定められているZEH基準を満たしていることがZEHに必要な条件です。

♦ 省エネルギー 建築基準法に定められている省エネ基準よりも20%以上高い省エネがZEHに必要な条件です。

♦ 創エネルギー 家庭で使うエネルギーを家庭で作れる太陽光発電、家庭用燃料電池システム、定置用リチウムイオン蓄電システムなどが設置されていることがZEHに必要な条件です。

ZEHの住宅のメリット

それでは、ZEHのメリットについて見ていきましょう。

♦ 資源を自給自足する
日本は資源のない国です。東日本大震災以降は、現在も一部の原子力発電所が停止されている為、日本の一時エネルギー自給率はさらに下がっています。その為、大量の石油を輸入し、稼働できる原子力発電所はフル稼働させて、電力を作っています。しかし、石油の価格は世界情勢によって変わる為不安定で、価格が高騰すれば直接家計に響きます。

企業もエネルギーを節約するための努力をしていますが、家庭での省エネも大切です。各家庭でエネルギーを受給自足できるようになることが、資源の少ない日本においては理想なのです。

♦ 地球温暖化を防ぐ
私たちが暮らす地球の表面を覆っている大気は、主に窒素や酸素ですが、温室効果ガスである二酸化炭素もわずかに含まれいます。そしてこの二酸化炭素には赤外線を吸収後、再放出する働きをします。この働きのおかげで、地球の表面の温度は極端に低くならず、平均気温14℃が維持されてきました。

しかし、18世紀後半に起きた産業革命以降、石炭、石油、ガスなどが大量に消費されるようになりました。それに伴い、大気中の二酸化炭素も増大したため、地球の表面の温度が徐々に上がっているという現象が地球温暖化です。

石油やガスを使わず、太陽の光で電力を作ったり蓄電したりすることができれば、大気中の二酸化炭素を減らすことができます。この広い地球で、自分の家だけがそんなことしても…と思われるかもしれません。しかし、この取り組みは一人でも多くの人が努力することによって、徐々に効果を上げるものなのです。

♦ 光熱費を抑える
政府は電期料金を下げる努力をしていますが、現実的にはほとんどの家庭では、電気料金の高さに悩まされています。ここ数十年、電化製品は増える一方であり、電気がなければ生活は成り立たないと言っても過言ではありません。

ZEHで電力が自給自足できるようになれば、電気代や灯油代などの光熱費を抑えることができます。

♦ 家の中の温度を一定にする
日本ではセントラルヒーテイングが普及していない為、暖房をしている部屋と暖房をしていない玄関や廊下、浴室、トイレなどの温度差が大きい住宅がほとんどです。このような温度環境は快適ではありません。さらに、高齢者にとってはヒートショックなどのリスクもあります。

ZEHでは、太陽光発電や蓄熱システムを組み合わせて使うことによって、効率よく暖房ができること、高断熱の家であることから、家の中に温度差のない環境を作れます。

♦ 災害に強い
台風や地震、落雷などのよって停電した際には、蓄電地があるので、電力が供給されます。

♦ 資産としての価値が高い
資産価値の高い家とは、住宅性能の高い家です。もちろん耐震性も問われますが、断熱性能、省エネ性能がZEH基準を満たしていると、より資産価値の高い家になります。

♦ 補助金を受け取ることができる
ZEHビルダーの建築会社でZEH基準を満たしている住宅を建てた場合には、国からの補助金が受けられます。ZEHビルダーとは、ZEHを建てる建築会社として一般社団法人環境共創イニシアチブに登録している建築会社のことです。

従って、補助金の手続きは施工を依頼した会社が進めてくれますが、受けられる戸数に限りがあるので、必ず受けられるという訳ではありません。

ZEHの住宅のデメリット

♦ 住宅にかかるコストが上がってしまう
ZEHの基準を満たす為には、一般的な住宅より高い性能を備えなければならない為、建築費が嵩みます。

♦ 発電量が不安定
太陽光を利用して発電や蓄熱をするシステムなので、天候や季節の日射量によって、電力の量が左右されます。現在の状況では、季節や天候によっては、太陽光発電や蓄電池だけでは電力を賄えないという家庭も少なくありません。

ZEHは予算との兼ね合いを考えて

国の方針としては、2020年までにZEHを標準的な新築住宅とすること、2030ねんまでに新築住宅の平均で ZEHの実現を目指しています。しかし、消費者にとっては、快適な暮らしと引き換えに、一般的な住宅よりも建築費が嵩むという問題点もあります。

無理をして建てれば住宅ローンも高額になり、生活が圧迫される恐れもあります。売電をする予定だったのに、売電価格が下がって思ったような収入にならなかったというケースもあります。

新築にかける予算とZEHのメリットを考え合わせること、また、今後太陽光発電での電力の売電の価格の移り変わりを家を建てるタイミングで確認することが大切です。

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監修者情報

高坂 昇

高坂 昇ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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