長期優良住宅のメリットとデメリット

資産価値のある家を建てたい、子や孫の代まで快適に暮らせる家にしたいという人にとって、長期優良住宅は安心して住まえる家です

長期優良住宅とはどのような住宅なのか確認していきましょう。

長期優良住宅とは

日本では、数十年に渡り、ビルトアンドスクラップともいえるような家づくりがされてきました。海外の先進国と比較すると、極めて住宅の寿命が短く、消費者の生活を圧迫する家づくりです。そしてこのような家づくりは大量の廃材と、空き家を生み出しました。

古来、日本の家づくりはそのような方式ではありませんでした。地方に行けば、戦前の民家に暮らしている人たちも少なくありません。しかし、都心部では戦後、焼け野原になり、早急にたくさんの住宅を作る必要がありました。その結果、寿命の長い住宅を丁寧に作るというよりも、手早く合理的に住宅を作るという方式でたくさんの住宅が建てられました。

耐久年数の短い住宅がついている土地は更地よりも低価格になってしまう為、相続放棄され、空き家が増えているのも、その為です。また、阪神淡路大震災や東日本大震災、熊本地震では多くの家が倒壊し、住宅の耐震性についても見直しが進められました。

そのような住宅事情を見直すべく作られた制度が長期優良住宅です。寿命が長く資産価値が揺るがない住宅を作り、消費者の安全な暮らしを保証すること、生活に必要なエネルギーの消費を抑えること、無駄な廃材を出さないことを目的として、様々な基準が設けられています。

長期優良住宅の認定基準

国土交通省のサイトに示されている長期優良住宅の認定基準は次のようなものです。

■ 住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
■ 住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。■ 地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
■ 維持保全計画が適切なものであること。

このままではわかりにくいので、具体的な認定基準である9つの項目の内容について、確認していきましょう。

■ 劣化対策  家の骨組みである基礎や柱、梁に対して、最低でも100年間維持する為の劣化対策がされていること  劣化対策等級3+αが求められます。→ 劣化対策等級3+αとは、木造建築であればシロアリ対策、鉄筋であれば錆び対策など、住宅を劣化させないための対策の程度を評価する3段階の等級です。
等級1は建築基準法が定める最低限の対策、等級2は、2世代に渡って等級3は3世代に渡って家を良いコンデションを維持できる対策がされていることを表します。したがって、劣化対策等級3+αは、最も高レベルな劣化対策が施されている家ということを表します。

■ 耐震性 耐震性の高さを表す住宅性の表示には3つの等級があります。建築基準法の耐震性能を耐震等級1です。耐震等級1とは、震度6強から7程度の地震が起きても倒壊、崩壊しない程度の耐震性です。耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の地震が起きても倒壊、崩壊しない程度の耐震性です。耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の地震が起きても倒壊、崩壊しない程度の耐震性です。

具体的には、学校や病院は耐震性能2、防災拠点である消防署や警察署などが耐震性能3を持つ建築物です。長期優良住宅には、耐震性能2以上が求められます。

■ 省エネルギー性 省エネルギー性対策等級によってあらわされる省エネルギー性とは、断熱性と気密性、結露対策などから割り出されます。いかにエネルギーを消費せずに冷暖房ができるかという基準です。断熱性能に対しては4段階、エネルギー消費量に対しては3段階で評価されます。長期優良住宅には最も高い省エネルギー性を表す省エネルギー対策等級4が求められます。

■ メンテナンスの容易さ 家はどんなに性能の高い家であってもメンテナンスをしなければ長持ちしません。メンテナンスが手軽にできることが、家の寿命を長くするのです。その為、長期優良住宅には、点検、修理や補修を難なくできるような措置が施されていることが求められます。

■ 維持保全管理 せっかくメンテナンスがしやすい措置が講じられていても、実際にメンテナンスを行わなければ意味がありません。その為、長期優良住宅には、長期に渡って定期的にメンテナンスがおこなわれるよう、計画が作成されていることが求められます。

■ 居住面積 国土交通省が定めている一般型誘導居住面積水準とは、家族の人数に応じて必要な居住面積のことです。長期優良住宅には一般型誘導居住面積水準を満たし、快適な生活ができる広さの家であることが求められます。

■ 可変性 長く住まううちには、出産や子育て、子供の独立、子供夫婦との同居など様々なライフスタイルの変化が訪れます。また、時代の移り変わりとともに、人々が好む生活様式も変化します。長期優良住宅には、そのような変化に対応して、間取りが変更できるような措置が講じられていることが求められます。

■ バリアフリー ライフスタイルの変化の中には、高齢化や病気、事故によってバリアフリー改修が必要になるという変化も含まれています。長期優良住宅には、そのような時に、簡単に改修できるようなそのような措置が講じられていることが求められます。

■ 居住環境 家の性能がどんなに良くても、周辺の環境によっては快適な生活が営めません。その為、長期優良住宅には、景観や周辺の環境が整っていることが求められます。

・長期優良住宅のメリット

長期優良住宅の認定受ける為には、所管行政庁の発行する認定通知書会が必要です。認定通知書会は、登録住宅性能評価機関で技術的審査を受け適合証を発行された後に、所管行政庁へ申請し、所管行政庁の審査に通ると、発行されます。そして、長期優良住宅として認定されると、様々なメリットがあります。

■ 所得税の住宅ローン免除 10年間で毎年度最大50万円まで住宅ローンが免除されます。一般的な住宅での限度額40万円より、毎年度10万円の差があり、10年間での差は100万円です。

■ 所得税の投資型減税 長期優良住宅の建築にかかった費用の10%が年末の所得税額から免除されます。ただし、住宅ローン控除との併用はできません。

■ 登録免許税の軽減 不動産を取得する際に必要な登録免許税が、一般住宅では0.15%であるのに比べて、長期優良住宅では0.1%に引き下げられます。

■ 不動産取得税の軽減 新築時には不動産取得税がかかりますが、長期優良住宅では一般の住宅の1200万円に比べて1300万円と控除額が増えます。

■ 固定資産税の軽減 一般の住宅では、新築後1~3年間に渡って固定資産税が2分の1に減額されますが、長期優良住宅では、1~5年間に渡って固定資産税が2分の1に減額されます。

■ 【フラット35】Sを利用すると住宅ローンが低金利になる 住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して行っている住宅ローン【フラット35】の借入金利は、前期間に渡り、1.37%です。これに比べて長期優良住宅は最初の10年間だけ、1.12%の金利で住宅ローンを利用できます。

・長期優良住宅のデメリット

長期優良住宅は、長い目で見ると非常に良い住宅です。しかし、実際に建てるとなると、一般の住宅よりも手間と費用がかかります。

■ 申請や点検 長期優良住宅として認定してもらうための手続きや、暮らし始めてからのメンテナンスに手間と費用がかかります。具体的には、技術審査や認定手数料で5万~6万円程度、住宅性能を満たす為の建築工事には、一般的な住宅に比べて、1,2~1,3倍程度の建築費が嵩みます。

■ 工期が長い 建築工事に加え、検査や申請が行われるため、一般的な住宅より、工期が長くなってしまいます。

長い目で見れば長期優良住宅なのか?

長期間に渡って、快適に安全に暮らせることが保障され、買い替えや住み替えの時に有利な条件で取引できる長期優良住宅は、非常に魅力的です。しかし、長期優良住宅にした為に家計が圧迫されてしまっては、余裕のある生活なくなってしまいます。

自分たち家族にとって、多少無理をしてでも長期優良住宅にした方が良いのか、減税措置などがあるにしても、家計は圧迫されるからやめておいた方が良いのかを十分に考えることが大切です。

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監修者情報

高坂 昇

高坂 昇ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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