【木造ビル】コスト比較と5つの特徴│建築費用増を避ける対策、シミュレーション事例、補助金制度も解説

【木造ビル】コスト比較と5つの特徴│建築費用増を避ける対策、シミュレーション事例、補助金制度も解説

「木造ビルの建築コストはどの程度かかりますか?」
本記事では、木造ビルについて受けるこうした質問にお答えします。

木造ビルは建築コストが安くなる要素がある一方で高くなる要素もありますので、一概にプロジェクトにかかる費用を抑えられる訳ではありません。

建築コストについての特徴を把握して、費用対効果に優れたビル建築を目指しましょう。

なお、木造ビル建築には国や自治体から補助金が交付されるケースもあります。
記事の中で紹介しますので、活用して実質的な建築費を抑えましょう。

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木造ビルとは?

木造ビルは、ビル建築の柱や梁など、主要構造部に木材を利用した建物を指します。

建築物を木造で建てることで、次のとおり複数のメリットが生まれます。

  • 木材として炭素を固定し二酸化炭素を削減できる
  • 地域にある木材を利用し活性化に
  • 木を利用した建物自体が地域のシンボルになる

建築基準保の耐火構造に関する合理化の内容

引用:国土交通省「令和4年度建築基準法改正について」

近年は主に防火構造についての規制が緩和されていることから、構造部および仕上げに対して木材を利用しやすい環境が整えられている点も、木造ビル建築の増加を後押ししています。

関連記事:【木造ビル】7つのメリット・2つのデメリット解説

木造ビルのコストに関する5つの特徴

木造ビルの建築によって魅力的な建物になることを期待できる一方で、気になるのは木造ビル建築のコストです。

建築費用の面では、木造ビルは次の特徴を持っています。

  • CLTなど構造用集成材の利用で工事費が高くなる
  • 耐火構造にするために建築費用が高くなる
  • 躯体が軽量で地盤改良・基礎工事費が安くなる
  • 現場での工期が短くなり仮設費などが安くなる
  • 建材の運搬性が高く費用が安くなる

CLTなど構造用集成材の利用で工事費が高くなる

木造ビル建築には、CLT(Cross Laminated Timber:木材の繊維方向が直交するよう積層接着した建材)やLVL(Laminated Veneer Lumber:木材の繊維方向が平行になるよう積層接着した建材)が利用されます。

一般的に、RC(鉄筋コンクリート)造やS(鉄骨)造と比較して、1m3(立方メートル)あたりの単価はCLTやLVLの方が高い傾向にあります。

材料費に加えて、集成材に利用される金物が普及していないことから、金物にかかる費用もコストアップの一因です。

耐火構造にするために建築費用が高くなる

木造ビルは、耐火構造に適合させることもコストアップの要因になります。

木造で大規模な建築物を建てるためには、木質系の構造部を耐火被覆材や不燃木材で被覆する、鉄骨を木材で被覆するといった対策を取らなければいけません。

不燃材料として扱われる一定以上の厚さの鉄筋コンクリートなどと比較して、特殊な加工を施す木造ビルは建築費用が高くなる要素を持っています。

関連記事:『耐火・準耐火の違い』を分かりやすく解説

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躯体が軽量で地盤改良・基礎工事費が安くなる

建築費用が高くなる要素がある一方で、安くなる要素もあります。

たとえば、木造ビルはRC造やS造と比較して躯体を軽量化できる特徴があり、地盤改良工事や基礎工事の費用を抑えられる点がメリットです。

木造とS造を比較したシミュレーションにおいても、次のとおり地盤改良と基礎工事の費用が安価になる結果が出ています。

  • 【木造】地盤改良費用:0円 基礎工事:489万円
  • 【S造】地盤改良費用:1,000万円 基礎工事:1,333万円

参考:岐阜県「非住宅施設の木造化にかかる低コストマニュアル・事例集」

一般的にS造よりRC造の方が重いことから、RC造の場合は地盤改良と基礎にかかる費用の差はさらに広がることが予想されます。

現場での工期が短くなり仮設費などが安くなる

区    分CLT造RC造S造
工 事 期 間6ヶ月
(100%)
7ヶ月
(116%)
7ヶ月
(116%)
躯体
工事
期間
準備工程約100日約30日約80日
現場工程(建て方)約10日約30日約20日
躯体以外期間(内装工事)約20日約40日約50日

引用:岡山県「CLTの建築コスト調査を行いました」

木造ビルは、現場での工期が短くなる点も、コストを抑える要因となります。

CLTやLVLといった建材は工場でプレカットした部材を現場で組み立てることから、実質的な現場での工事期間が短くなり、仮設工事や建設用資機材のリース期間を短くできる効果も期待できます。

ただし、施工図作成や建材の加工など準備工程はRC造やS造より日数を要することから、より計画的なスケジュール管理が求められる点も特徴です。

建材の運搬性が高く費用が安くなる

木造ビルのコストに関する特徴:建材の運搬性が高く費用が安くなる

参考:岐阜県「非住宅施設の木造化にかかる低コストマニュアル・事例集」

木造ビルは建材の運搬性が高い点もコスト減になる特徴になります。

S造は建材が長大であることから大型トラックが必要です。
一方で木造は建材が軽量で運搬しやすく、現場での搬入や作業の際のクレーン費用なども抑えられます。

ただし、長大なスパンをつなぐ特殊な建材を多用する場合などは木造でもS造と同等、または超える費用が必要になるケースもありますので注意が必要です。

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木造ビルのコスト増を避ける対策

木造ビル建築には、コストの増減どちらの要因もありますが、コスト増を避ける対策もありますので紹介します。

特殊な木材の利用を避ける

1つ目の方法は、特殊な木材の利用を避けることです。

木造ビルでCLTやLVLを利用する場合でも、一般的な木造住宅とコストを抑える考え方は変わりません。
柱による支えなしで長大なスパンの空間を作る場合、梁の寸法を大きくするなど特注の木材を利用することとなり費用が高くなります。

適度に柱や耐力壁を設けて、一般的な規格の木材を利用することで木工事の費用を抑えられます。

木材が露出する工法を避ける

2つ目の方法は、木材が露出する工法を避けることです。

木造ビルでは木材の活用をアピールするためにも、木材が露出した仕上げが利用されるケースが多くなります。
しかし、木材を露出させる場合は難燃処理を施した集成材を支持部分に配置するなど、手間と費用がかかる点が難点です。

コスト減を目的とする場合は、木材が露出する工法を避ける方がおすすめです。

木造ビルの建築コストのシミュレーション事例

実際に木造ビルを建築する場合、建築費用は他の構造と比べてどの程度変わるのか、自治体が行ったシミュレーションの結果を見てみましょう。

岐阜県の事例

岐阜県の事例は、木造総2階建て、延床面積773.5m2(平方メートル)の共同住宅に関するものです。

実際に建築された木造建築と、同規模の建物をS造で建築した場合のシミュレーション結果は以下のとおりです。

木造ビルの建築コストのシミュレーション事例(岐阜県)

参考:岐阜県「非住宅施設の木造化にかかる低コストマニュアル・事例集」

結果としては、木造で建築した方が400万円超のコスト減となっていて、その主な要因は地盤改良費が不要であったこと、基礎工事が安価になったことです。

一方で躯体工事に限ると木造の方が2,500万円超高い結果となりました。
工事の費目によって金額の差が大きく、木造ビルを建築する際は総額で計算する大切さが分かります。

岡山県の事例

続いて岡山県の事例は、CLTパネルを利用した建築物について、RC造、およびS造と、建築コストや現場作業員数などを比較したものです。

木造ビルの建築コストのシミュレーション事例(岡山県)

引用:岡山県「CLTの建築コスト調査を行いました」

結果としては、CLT造が最も安価になったものの、RC造やS造と比較した場合大きな差が出ないものでした。

ただし、総費用に大きな変更はないものの、基礎工事費はCLT造が特に安価で、逆に躯体工事はRC造やS造の約2倍の金額を要しています。

こちらの事例でも、工種によって建築費用の総額が大きく異なることが分かります。

建築条件によって有利・不利は変わる

岐阜県と岡山県のシミュレート結果を見ると、CLTやLVLを利用した木造建築物とRC造やS造といった建物とのコストの差は比較的小さいこと、さらに工種による金額の差が大きいことが分かります。

一方で工種ごとに費用の差額が大きいことから、現地の状態や地盤の状況などによって選択するべき工法が異なる点に注意が必要です。
工法ありきでなく、臨機応変に採用する工法を選択することをおすすめします。

木造ビル建築で利用したい補助金制度

木造ビルには、林業活動推進などを目指して補助金が交付される例がありますので紹介します。

中・大規模建築物の木造木質化支援事業実施設計上限5,000万円の補助

建築工事上限5億円の補助

木の街並み創出事業補助対象経費の2分の1以内

上限3,000万円

 

このような補助金を活用することで、実質的な費用を抑えながら木造ビルを建てることが可能です。

このほかにも国や自治体が補助金を交付する例はありますので、建築予定の自治体ではどのような補助金が行われているか、確認の上で建築計画を立てましょう。

参考:林野庁「建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧」

まとめ│木造ビルを選択肢に加えよう

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木造ビルの建築で気になるコスト面について、特徴やコストアップへの対策、他の建材と比較検証した結果を参考に紹介しました。

木造ビルは規制緩和の影響もあり、近年施工事例が増えています。
軽量であることから建築費用を抑えられるほか、補助金の利用でさらに割安に建築できる可能性があります。

また、木特有の温かみで魅力的な仕上がりになるなど素材特有のメリットもありますので、商業用ビルのほかアパートやマンションの建築を計画している方は、ぜひ木造ビルの選択をご検討ください。

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監修者情報

高坂 昇

高坂 昇ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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