木造を耐火構造にするコストは?費用相場や坪単価、耐火と準耐火の違いや建築制限について

木造を耐火構造にするコストは?費用相場や坪単価、耐火と準耐火の違いや建築制限について

東京都などの都市部では、防火地域や準防火地域が多くなるため、コストを抑えやすい木造での耐火建築物のニーズが高まっています。

そこで本記事では、木造を耐火構造にした場合の費用相場坪単価耐火と準耐火の違い防火地域の建築制限について解説します。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較検討するためにも、木造の耐火建築物について確認してみましょう。

 

 

木造を耐火構造にするコストは?

木造を耐火構造にするコスト

木造の構造上主要部分を「耐火構造」にして「耐火建築物」とした場合、コストは割高になります。

費用の目安を確認してみましょう。

耐火構造は10%~20%コストが上がる

木造を耐火構造にする方法はいくつかありますが、建物の構造主要部分を耐火性能の材料で覆う「被覆型」が一般的です。

壁や柱、床や屋根などに、国土交通大臣が認定した耐火性能に適合するように設計・施工するため、一般的な建物と比べて、建築コストが10%~20%高くなります。

【木造耐火建築物】坪単価の目安

木造の耐火建築物の坪単価は、いくらなのでしょうか?

令和5年の国税庁による木造の建築費は、全国平均で「約58万円」です。

耐火建築物にすることで、コストが10%から20%上がると想定した場合、木造耐火建築物の坪単価は「約64万~約70万」が目安です。

参照サイト:国税庁 構造別の工事費用表(1m当たり)【令和5年分用】

【木造耐火建築物】建築費用の目安

木造の耐火建築物の建築費用を先ほどの坪単価を参考に、概算してみました。

【木造耐火建築物の建築費】

延床面積建築費用の目安
20坪1,830万~2,000万
30坪2,740万~3,000万
40坪3,660万~4,000万

※坪単価×延床面積÷0.7で概算した値

建築費用は、建物の仕様や住宅性能、デザインや立地によって異なるため、上記の費用は参考程度にして頂き、必ず見積もりを確認してみましょう。

 

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耐火構造・準耐火構造にしなくてはいけない条件とは

耐火建築物にするエリア

建物を耐火構造や準耐火構造にしなくてはいけない条件は、「建てるエリア」「建物の規模」によって異なります。

予定している建築物が、条件に該当するのか確認してみましょう。

耐火構造にしなくてはいけないエリアや建物

建物の主要部分を耐火構造にし、耐火建築物にする条件は、下記の通りです。

 

エリア建物の規模
防火地域・地階を含む3階建て以上の建物

・100㎡超えの建物

準防火地域・地上4階以上の建物

・延床面積1500㎡超え

 

防火地域は、人口密度の高い「駅周辺」「建物密集地」が指定されるため、利便性の高い都心部エリアで該当するケースが多くなります。

準防火地域は、防火地域の外側を囲んだエリアが、指定されます。

準耐火構造にしなくてはいけないエリアや建物

準耐火建築物にする条件は、下記の通りです。

 

エリア建物の規模
防火地域・地階を含む2階建て以下、かつ、100㎡以下
準防火地域・地上3階以下、かつ、延床面積1500㎡以下

・地上2階以下、かつ、延床面積500㎡超え1500㎡以下

 

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耐火建築物と準耐火建築物の違い

木造 耐火建築物

▶木造耐火建築の事例 敷地12.16坪

耐火建築物と準耐火建築物の具体的な違いは、どこになるのでしょうか?

おもな違いについて、確認してみましょう。

耐火建築物とは

耐火建築物とは、建物の壁や柱、屋根などの主要構造部分に、耐火性能のある材料が使用されており、火災による延焼や損傷を最小限に抑えることができます。

建築基準法が2000年に改正したことにより、耐火性能の基準を満たすことで、木造でも耐火建築物を建築できるようになりました。

一般的に、鉄筋コンクリート造やレンガなど、燃えにくい材料で建てられることが多いですが、近年では、コストを大幅に抑えられる木造での施工も増えてきています。

 

関連記事:【木造の耐火建築物とは?】基準やメリット、準耐火との違いを徹底解説 

準耐火建築物とは

準耐火建築物とは、耐火建築物と比べて耐火性能の基準が緩やかになります。

耐火建築物は、火災による建物の「倒壊や延焼を防止する」ことを求められた建物ですが、準耐火建築物は「延焼を抑制する」性能を有した建物です。

火災による耐火時間も耐火建築物は、「最大3時間」の耐火時間が求められますが、準耐火建築物は、「最大1時間」になります。

 

▶木造の耐火の施工事例一覧

木造の耐火建築物のメリット

▶防火地域の木造 耐火建築物 4階建ての事例

木造の耐火建築物のメリットについて、ご紹介します。

【メリット】

  • 建築コストを抑えやすい
  • 狭小地でも施工しやすい
  • コストを抑えて耐震性を高められる
  • 火災保険料が安くなる

建築コストを抑えやすい

木造は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて、建築コストを安く抑えやすいメリットがあります。

 

【コストを抑えられる理由】

・木材は安く仕入れやすい

・工期が短く、人件費を抑えられる

・建物重量が軽いため、地盤改良費を抑えられる

 

上記の理由から、建築コストを大幅に抑えることが可能です。

一例として、東京都の構造別坪単価を確認してみましょう。

 

【東京都の構造別の工事費用】

構造坪単価
木造約58万
鉄骨造(S造)約106万
鉄筋コンクリート造(RC造)約112万

参照サイト:国税庁 構造別の工事費用表(1m当たり)【令和5年分用】

木造と鉄筋コンクリート造では、建築費用に約2倍の差が生じます。

狭小地でも施工しやすい

木造 耐火建築物

鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合、大型のクレーン車やコンクリートミキサー車などの重機の搬入が必要です。

狭い道路が多い住宅密集地では、施工が困難になるケースがあります。

その点、木造は木材をトラックで搬入して、現場で組み立てるため、狭小地でも施工しやすい特徴があります。

コストを抑えて耐震性を高められる

木材の特徴として、曲がる力に強い、しなやかさを持っています。

鉄筋コンクリート造と比べて、どっしりとした頑丈さはありませんが、地震による揺れを小さく抑えることができます。

施工会社にもよりますが、3階建て・4階建ての木造耐火建築物でも、耐震性を最高等級の3にすることは可能です。

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火災保険料が安くなる

木造でも、耐火の基準を満たしていれば、火災保険料を安く抑えることができます。

火災保険料は、構造性能によって費用が異なります。

  • M構造(マンション構造)
  • T構造(耐火構造)
  • H構造(非耐火構造

 

一般的なH構造の木造より、T構造の木造のほうが、火災保険料が安くなります。

 

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木造の耐火建築物のデメリット

木造の耐火建築物のデメリットについても、確認しておきましょう。

【デメリット】

  • 一般的な木造より高くなる
  • 施工会社によっては実績が少ない

一般的な木造より高くなる

一般的な木造と比べて、耐火建築物は建築費用が高くなります。

いつの間にか、予算オーバーして後悔しないために、資金計画や見積もりの確認など、事前にプロに相談するのがおすすめです。

 

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施工会社によっては実績が少ない

耐火建築物の一般的な構造は、火災に強い鉄筋コンクリート造です。

そのため、施工会社によっては、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の施工実績はあっても、木造耐火建築物の実績が少ない場合があります。

その場合、木造を希望していても、鉄筋コンクリート造を強く勧められてしまう恐れがあります。

会社によって得意な構造や施工方法は異なるため、木造の耐火建築物を希望する場合には、HPなどで施工実績や得意な工法を確認することが重要です。

とくに、木造4階建ての場合、施工実績のある会社は、圧倒的に数が少なくなるため、比較検討前に確認しておきましょう。

 

関連記事:延焼ライン(延焼のおそれのある部分)とは?「緩和」で防火・準防火・22条区域で火災に強い家を建てる 

クレバリーホームの木造4階建て

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まとめ

防火地域でも建築できる木造の耐火建築物のコストや坪単価、耐火と準耐火の違いなどについて解説しました。

木造は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて、建築費用を大幅に抑えられるメリットがあります。

利便性の高いエリアが多い防火地域で、コストを抑えた建築をご希望の方は、木造がおすすめです。

ただし、木造を耐火建築物にするためには、高度な技術力が必要になるため、施工会社選びは慎重におこないましょう。

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監修者情報

高坂 昇

高坂 昇ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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