『密集市街地』とは?基準や課題、対策について解説│耐火住宅で不燃化防災対策
密集市街地とは、「老朽化した木造住宅等が密集し、十分な防災機能が確保されていない市街地」です。
道路が狭く、公園などの広場が少ないことから、地震や火災発生時の危険性が高いため防災対策を強化すべきエリアとして「密集法」で指定されています。
東京都内など都市部の住宅密集エリアに木造住宅などを新築・建て替えする際は、主に火災の延焼防止・避難対策などが求められます。
本記事では、密集市街地とはどういった特徴の地域を指すのか定義や基準を解説した上で、密集市街地の課題と解消策を、行政・地域・住民それぞれの視点で紹介します。
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密集市街地とは?
はじめに、密集市街地とはどういった特徴を持つ地域を指すのか確認しましょう。
密集市街地は、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(密集法)」で、以下のように言葉の意味が説明されています。
当該区域内に老朽化した木造の建築物が密集しており、かつ、十分な公共施設が整備されていないことその他当該区域内の土地利用の状況から、その特定防災機能が確保されていない市街地をいう。
参考:密集法「第二条一」
密集法では、特定防災機能についても記載があり、「火事又は地震が発生した場合において延焼防止上及び避難上確保されるべき機能」と説明されています。
つまり、密集市街地は、建物が密集していることから火事・地震の発生時に火災が広がりやすく避難しづらい地域といえます。
重点密集市街地とは?東京はどこが該当する?
密集市街地の中には、さらに重点密集市街地として指定されるエリアもあります。
重点密集市街地は、国土交通省によって以下のとおり説明されています。
密集市街地のうち、延焼危険性が特に高く地震時等において大規模な火災の可能性があり、そのままでは今後10年以内に最低限の安全性を確保することが見込めないことから重点的な改善が必要な密集市街地
国土交通省のホームページでは、東京都・大阪府の重点密集市街地について地図・地区名を公表していますので、重点密集市街地で土地の購入を検討している場合は地震・火災に備えた災害に強い家づくりが必要となります。
木造密集地域とは?
密集地域と似た言葉に、木造密集地域(木密)があります。
密集市街地と同様に、道路・公園などの整備が不十分な点や、老朽化した木造建築物が多いエリアを指し、地震や火災の際に被害が大きくなることが予想される地域を指します。
関連記事:木造密集地域とは?新築・建て替えの防耐火対策を解説
木密地域不燃化10年プロジェクトなど、東京都では木密地域を減らすための独自の取り組みが行われています。
建物が密集する地域に住む場合は、地方自治体独自の火災対策を確認することも大切です。
参考:東京都都市整備局「不燃化特区制度と特定整備路線の取組」
密集市街地の課題とは?
改めて、密集市街地に該当するエリアでは、どういった課題があるのか確認します。
地震・火災時に大規模火災になる危険性がある
1つ目の課題は、地震や火災が発生した場合に大規模な火災につながる危険性があることです。
密集市街地では、住宅同士が近接して建てられていることから、火災の発生時に隣家に延焼する危険性が高まります。
また、密集市街地では古い建物が多いことから、耐火性能などの基準を満たしていない家があることも火災が広がりやすい要因に挙げられます。
道路・公園が少なく災害時に避難しづらい
2つ目の課題は、道路や公園が少ないことから災害時の避難に支障が出ることです。
広い道路は火災の火や煙を避けられる、避難のための誘導路となります。
公園などの広場は緊急避難場所として利用できます。
密集市街地では、道路が狭く公園も少ないことから、避難路も緊急避難場所も不足しがちです。
道路が狭いため消防車・救急車が入りづらい
3つ目の課題は、緊急車両が進入しづらいことです。
道が狭いことで、大型の消防車や救急車の進入が妨げられることがあります。
さらに地震時には倒壊した建物によって道が塞がれ、火災や救急の現場にたどり着けない可能性もあります。
密集市街地で家を建てる場合には、こうしたリスクに備えて火災を受けても倒壊しない家づくり、隣家に延焼しづらい家づくりをする必要があります。
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密集市街地の課題への行政の対策は?
こうした課題を抱える密集市街地に対して、国や自治体など行政は様々な対策を講じていますので紹介します。
避難路・緊急車両の進入路としての道路整備
避難用の道や緊急車両の進入路を確保するために、道路の拡幅などの整備が行われています。
引用:都市再生機構「密集市街地を、安全で魅力あるまちに変える」
この事例では、元々車の行き違いが難しい3mの狭い道路でしたが、整備事業によって道幅を6.7mに拡幅しています。
整備の結果、火災の延焼を防ぐことができ、緊急車両が通過することも容易にできる道路幅を確保できました。
避難場所・延焼防止を目的とした公園整備
避難場所を確保するための公園整備も行われています。
東京都北区では、大学移転の跡地を利用して、避難場所確保を目的とした大型の防災公園を整備しています。
普段は家族連れから高齢者まで利用できる憩いのスペースとして、災害時には対策本部を設置できるスペースとして活用を見込んでいます。
木造賃貸住宅・老朽建築物の除却・建て替え費用の助成・減税
老朽化した木造住宅の建て替えが進まない理由として、地権者との調整や不燃化住宅への建て替え費用の負担が挙げられます。
参考:国総研「密集市街地の整備課題とまちづくり誘導手法の役割」
こうした課題に対して、国や自治体は老朽化した建物の取り壊しや建て替えに対する助成金や減税といった施策で推進を図っています。
東京都では、老朽化した建物に対して、建物を取り壊す費用や建て替えの設計・工事費に対する助成制度を運用しています。
関連記事:木造密集地域とは?新築・建て替えの防耐火対策を解説
さらに不燃化特区内で建て替えする場合に、固定資産税や都市計画税を減免する制度も実施されています。
参考:東京都主税局「住宅に対する固定資産税・都市計画税の減免」
参考:東京都主税局「土地に対する固定資産税・都市計画税の減免」
東京都内でも区によって助成制度が異なりますので、新居の建築や建て替えを予定している区の制度を確認することをおすすめします。
参考:一般財団法人住宅生産振興財団:木密「東京都・各区の助成制度」
密集市街地の課題への地域・住民レベルの対策は?
密集市街地に家を建てる場合、ハザードマップをもとに地域住民が連携しながら災害に強いまちづくり、家づくりを進めることが大切です。
耐火構造・準耐火構造の家を建てる
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密集市街地は防火・準防火地域に指定されることが多いため、耐火構造、または準耐火構造にすることが求められます。
耐火構造の建物は、火災が発生してから決められた時間を経過するまで倒壊することを防ぐ仕様の建物です。
準耐火構造は、火災が発生したときに周囲の建物に延焼することを防ぐ仕様の建物です。
万が一火災を受けた場合も、延焼や建物の倒壊のリスクが大幅に軽減されます。
一定の条件を満たす耐火構造・準耐火構造にすることで容積率の緩和を受けられ、同じ敷地でも広い床面積を確保できるケースもありますので、狭小地で家を建てる場合は緩和の特例に該当するか確認しましょう。
関連記事:同じ土地でも建てられる家の大きさが変わる? 容積率緩和とは
省令準耐火構造の家を建てる
耐火・準耐火構造のほか、省令準耐火構造に適合する建物にする方法もあります。
省令準耐火構造とは、国が設けた制度ではなく住宅金融支援機構が独自に定めた基準で、以下の3つの特徴を持つ住宅を指します。
- 隣家などから火をもらわない(外部からの延焼防止)
- 火災が発生しても一定時間部屋から火を出さない(各室防火)
- 万が一部屋から火が出ても延焼を遅らせる(各室への延焼遅延)
耐火構造や準耐火構造と比べると耐火性能は控えめになるものの、十分な耐火性能を見込めるため、耐火・準耐火よりも費用を抑えつつ火災に強い家を建てたい方は導入を検討してみましょう。
隣家と一定度距離を保つ
住宅を建てる際の敷地の使い方も、延焼被害を避ける目的で重要です。
新築住宅を建てる場合、地域によっては隣家との距離を一定以上に保つことが義務付けられている場合があります。
こうした地域に入っていない場合でも、隣家との距離を保つことは延焼による火災を防ぐために効果がありますので、敷地の利用方法についても検討しましょう。
個人でも、こうした対策を取ることで、密集市街地の課題である災害・火災に対する対策を取ることは可能です。
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まとめ│密集市街地では火災に強い家づくりを
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都内など都市部に多い密集市街地について、そもそも密集市街地とはどんな意味を持つのか、その基準やどんな課題があり対策が取られているのか確認しました。
密集市街地は地震・火災時に大規模火災につながる可能性がある点が最大のリスクです。
しかし行政・個人の対策で、隣家から火が移ることや、他人の家に延焼させてしまうリスクを減らすこともできます。
耐火構造にするなど、適切な対策を取ることで密集市街地でも安心・安全な暮らしを実現しましょう。
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