延焼ライン(延焼のおそれのある部分)とは?「緩和」で防火・準防火・22条区域で火災に強い家を建てる

延焼ラインとは、火災が起きたときに隣家へ燃え移るおそれがある範囲のことです。防火地域・準防火地域・22条区域で家を建てるときに関係します。
隣地境界線や道路中心線から、1階は3m以内、2階以上は5m以内の範囲が対象です。この範囲(延焼のおそれのある部分)にある窓などの開口部や外壁には、火災に強い建材や設備(防火構造や防火設備)を使用する必要があります。
本記事では、延焼ラインの定義と対象地域、規制の内容、そして費用を抑えられる緩和規定について、都内の狭小地で木造耐火3階建て・4階建てを手がけるクレバリーホーム城東店・新宿店が、一級建築士の監修のもと解説します。
このコラムで分かること
- 延焼ラインとは、隣地境界線・道路中心線から1階3m以内、2階以上5m以内の範囲を指します
- この範囲にかかっても家は建てられます。窓や外壁の仕様が変わり、費用が変わる規定です
- 袖壁(柱や壁から直角に張り出した幅の狭い小さな壁)の設置や外壁面の角度による緩和規定を使えば、防火設備を減らせる場合があります
- 東京23区は大半が防火地域・準防火地域のため、都内の敷地の多くが対象になります
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Contents
延焼ラインとは?定義・規制範囲・緩和規定
延焼ラインの定義と目的
延焼ラインとは、火災が発生した際に炎が隣地や道路を越えて燃え移るおそれのある部分を示す基準線のことです。
建築基準法第二条・二十二条・六十一条といった法律に基づき、防火地域・準防火地域・22条区域といった規制区域で適用されます。
出典:建築基準法
延焼ラインの範囲
延焼ライン内として規制を受ける範囲は、以下のとおりです。
- 隣地境界線から、1階は3m以内、2階以上は5m以内の範囲
- 道路中心線から、1階は3m以内、2階以上は5m以内の範囲
- 同じ敷地内に2つ以上の建物がある場合は、建物同士の外壁の中心線から、1階は3m以内、2階以上は5m以内の範囲
※延べ面積の合計が500㎡以内であれば1つの建物とみなされます。母屋と離れを建てる場合や、住まいと賃貸棟を分けて建てる場合などに関係する規定です。
この規定を図示すると、以下のようになります。

隣地まで1m前後しか離せない都内の狭小地では、1階・2階以上を問わず、ほとんどの窓・外壁が延焼ラインの範囲に入ります。
だからこそ、後述する緩和規定の活用が費用に直結します。
正確な定義は以下の条文のとおりです(要点は上の箇条書きにまとめています)。
六 延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線(ロにおいて「隣地境界線等」という。)から、一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、次のイ又はロのいずれかに該当する部分を除く。
イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分
図面上の具体的な書き方は「【延焼ライン】2棟の建物・隣棟間の書き方は?」で解説しています。
3階建て・4階建ては「耐火建築物」の規制とセットで考える
都市部で3階建てや4階建てを建てる場合、延焼ラインのルールは一律で「2階以上と同じ5m」が適用されます。地階についても、地盤面より上に出ている部分は1階と同様に3mの延焼ラインが発生します。
しかし、3階建て以上の場合、防火地域では「3階建て以上、または延べ面積100㎡超」の建物は耐火建築物(または同等の延焼防止性能をもつ「延焼防止建築物」)に、準防火地域では「4階建て以上、または延べ面積1,500㎡超」は耐火建築物等に、「3階建て」は準耐火建築物等にすることが求められます。
「耐火建築物」とは、建物全体が火災に強い構造になっていることを指します。 (クレバリーホーム城東店・新宿店が手掛ける木造耐火4階建て住宅「もくよん®」などもこれに該当します。)
建物全体が「耐火建築物」の基準を満たしていれば、延焼ライン内の窓や外壁も、その耐火性能の一部として既に基準をクリアしているケースがほとんどです。
したがって、3階建て以上を検討する場合は、「窓ガラス1枚をどうするか」という議論だけでなく、「建物全体をどのレベルの耐火性能で建てるか」という視点でハウスメーカーと相談することをおすすめします。
※防火設備:火災時に一定時間、炎を遮る性能が認定された窓・ドアなどの設備
※準防火性能:外壁などが一定時間、火熱に耐える性能
※延焼防止建築物:耐火建築物と同等の延焼を防ぐ性能をもつ建物
出典:建築基準法 第61条(防火地域及び準防火地域内の建築物)
出典:建築基準法施行令 第136条の2(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)
延焼のおそれのある部分の緩和規定とは?(袖壁・角度・空地)
延焼ラインには、規制の対象外とする「緩和規定」がいくつか存在します。
これらは非常に複雑ですが、うまく活用することで、高額な防火設備を使わずにコストを抑えたり、網入りガラスではないクリアな窓を採用してデザイン性を高めたりすることが可能です。
防火・準防火地域での施工経験が豊富なハウスメーカーほど、この緩和規定の活用ノウハウを持っています。代表的な3つのテクニックをご紹介します。
① 袖壁(そでかべ)の設置による緩和

最も活用されるテクニックが「袖壁」の設置です。 これは、延焼ラインにかかる窓や玄関扉のすぐ横に、一定の防火性能を持つ壁(袖壁)を設置する方法です。
袖壁が炎を遮ることで、その袖壁自体が「防火設備」とみなされ、窓やドア本体を防火設備にしなくてよくなります。
窓が延焼ラインの範囲から外れるわけではない点に注意が必要です。
<メリット>
- 高価な「防火窓」が不要に:本来なら網入りガラスや防火シャッターが必要な窓を、一般的なサッシ・窓ガラスに変更できます。窓1箇所あたりのコストを抑えられます。
- デザイン性の向上:網(ワイヤー)のない透明なガラスを採用できるため、眺望や採光を妨げず、スッキリとした外観を実現できます。
敷地が狭く、隣家との距離が近い都内の住宅では特に有効な手法です。
出典:建築基準法施行令 第109条第2項(防火戸その他の防火設備)
② 角度・距離による緩和
延焼ラインの規制は、隣地境界線や隣家と「平行」であることを前提に厳しく設定されています。 もし、隣地境界線に対して建物を斜めに建てたり、隣家と角度がついていたりする場合、火災の熱が伝わりにくくなるため、規制が緩和されます。
複雑な計算が必要になりますが、設計の工夫次第で「この窓は規制対象から外れる」といったことが起こり得ます。
この角度による緩和は2019年6月施行の建築基準法改正で追加されたもので、詳細は令和2年国土交通省告示第197号に定められています。

出典:国土交通省「建築基準法の改正概要」
出典:国土交通省 建築基準法防火関係等告示の制定・改正について
③ 防火上有効な空地による緩和
「防火上有効な空地等」に面する部分は、延焼ラインから外すことができます。
たとえば、線路敷や公園、川などに面する部分は延焼ラインが発生しません。
道路や公共の用に供する水路に面する場合は、その中心線が延焼ラインの起点になります。敷地まわりの状況によって扱いが変わるため、家を建てる際は防火規制の面からも周辺環境をチェックしましょう。
【防火上有効な空き地の例】
- 川、水面、公園、広場、線路敷に面する場合:面する部分は延焼ラインが発生しない
※線路敷であっても、駅舎の部分は建築物として扱われます - 道路、公共の用に供する水路、里道、緑道に面する場合:中心線から延焼ラインを測定
※里道(りどう):登記されていない、公共の用に供されてきた細い道
出典:日本建築行政会議「建築物の防火避難規定の解説」
※行政庁により取り扱い(必要幅の条件等)が異なるため、確認申請時に特定行政庁・指定確認検査機関へ確認が必要
こうした規定を知ることで、防火設備を利用せずに費用を節約したり、好みのデザインの外壁材やサッシを利用できます。
耐火建築物に利用される「不燃材料」については「【不燃材料とは】耐火構造の違いや建築基準法での認定一覧」のコラムで紹介していますので、あわせてご参考にしてください。
規制を受ける地域(防火・準防火・22条区域)
延焼ラインは全ての土地に対して適用される訳ではありません。
規定される地域は、以下の3つの地域です。
- 防火地域
- 準防火地域
- 22条区域
東京23区は大半が防火地域・準防火地域に指定されています。ご自身の土地の指定は、各区の都市計画図で確認できます。
このうち防火地域・準防火地域では、延焼のおそれのある部分にある外壁・軒裏・開口部に、建物の規模に応じた防火性能が求められます。使えるのは、国が性能を認めた建材や設備に限られます。
具体的には、延焼ラインにかかる開口部(窓・玄関戸など)には、防火戸などの防火設備を設ける必要があります。
22条区域(法22条区域)とは、特定行政庁が防火地域・準防火地域以外の市街地について指定する区域です。
この区域では、建築物の屋根を不燃材料で造るか、ふく必要があります(第22条(屋根))。さらに木造住宅などの木造建築物等については、延焼のおそれのある部分の外壁にも防火性能が求められます。
外壁について、建築基準法では以下のとおり規定されています。
前条第一項の市街地の区域内にある建築物(…木造建築物等…に限る。)は、その外壁で延焼のおそれのある部分の構造を、準防火性能(…)に関して政令で定める技術的基準に適合する土塗壁その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
つまり木造住宅では、延焼ラインに含まれる部分の外壁を「準防火性能」のある構造にする必要があります。国があらかじめ定めた仕様で造るか、国の認定を受けた製品を使うかの、どちらかです。
防火地域、準防火地域については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事:防火地域・準防火地域(耐火建築物・準耐火建築物)とは? 種類や違いを一覧比較
関連記事:防火地域で木造4階建ては建てられる?耐火建築物のメリットや注意点、よくある疑問
延焼のおそれのある部分の仕様
具体的に、延焼ラインの範囲に入る家で求められる規制の内容は以下のとおりです。
- 防火地域・準防火地域の場合は開口部に防火設備を設置する
- 22条区域の場合は「準防火性能」の基準に適合する外壁にする
開口部の防火設備は、遮炎性能について国土交通大臣の認定を受けた製品を使用します。22条区域の外壁も同じく、準防火性能の技術的基準に適合する構造とします。
網入りガラス以外にどんな選択肢があるか、シャッターや面格子はどう扱われるかなど、具体的な建材の選び方は下記の記事で解説しています。
関連記事:防火地域の窓・サッシの規制とは?網入りガラスやシャッターなど利用できる建材
購入予定の土地が延焼ラインに入るのか、また、どういった規制を受けるのか詳しく知りたい方は、都内など防火・準防火地域での施工経験が豊富なハウスメーカーに相談してみましょう。
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延焼ライン内で家を建てる場合の特徴
利便性の高い地域に住むことができる

防火地域や準防火地域に指定される地域は、無指定の地域と比較すると利便性の高いエリアであることが多い傾向にあります。
延焼ラインが設定される地域に住むことで、駅の近くや商業施設の近くなど移動や買い物に便利な地域に家を建てられるでしょう。
木造密集地域などでも延焼の危険性を下げられる
東京23区内など住宅が密集する地域では、火災が発生した際に延焼しやすい特徴を持ちます。特に、木造住宅の多い木造密集地域では延焼の危険度が高いことが指摘されます。
関連記事:木造密集地域とは?新築・建て替えの防耐火対策を解説
延焼ラインの規制を受けて開口部や外壁に耐火性能の高い設備を利用することで、木造密集地域などでも、万が一自宅で火災が起きた場合には周囲に延焼させにくい家に、周囲で火災が起きた場合には延焼を受けにくい家になります。
使用したい建材を使えない場合がある
延焼ライン内の外壁や窓に使える建材は、国が性能を認めたものに限られます。一般的な住宅で使う建材はひととおり揃っていますが、選べる範囲は狭くなります。
外壁の一部に天然木を張りたいなど、実現したい外観デザインがある場合は限られた製品の中から選択しなければならない可能性があります。
建築費用が高くなる
防火設備の認定を受けたサッシや外壁材は、一般的な製品より単価が上がります。したがって、延焼ラインにかかる部分が多いほど、建築費用は増加します。
増額の目安と、緩和規定でどこまで抑えられるかは下記の記事で解説しています。
関連記事:【防火地域に耐火建築物】建築費用・値段は?安くする方法も解説
だからこそ、前述した「緩和規定」を熟知した設計事務所やハウスメーカーに相談し、無駄なコストを削減するノウハウを活用することが、都内で賢く家を建てるための鍵となります。
なお、延焼ラインの緩和は「使えるなら使う」ものではなく、費用対効果で使用を判断します。
都内の狭小地では敷地境界まで距離が取れず、開口部のほとんどが延焼ラインにかかりますので、まず防火窓のまま建てた場合の差額を全箇所で見積もり、そのうえで袖壁の設置費と比較します。
防火窓との差額が小さい小窓では使用せず、リビングの開口部など差額が大きく、眺望や採光を優先したい窓に利用すると効率的です。
延焼ラインに関するよくある質問
Q:延焼ラインは建築基準法の何条に定められていますか?
A:第2条第6号(延焼のおそれのある部分)に記載されています。詳しくは本記事「延焼ラインとは?」を参照ください。
Q:防火地域・準防火地域かどうかはどこで調べられますか?
A:自治体のホームページから確認する方法が一般的です。詳しくは「【防火地域・準防火地域の調べ方】マップで確認する方法を東京都を事例に解説」の記事をご確認ください。
Q:カーポートや物置にも延焼ラインの規制はかかりますか?
A:かかる場合とかからない場合があります。
カーポートも物置も建築物として扱われるため、隣地境界線や道路中心線からの延焼ラインは、母屋と同じようにかかります。詳しくは「【防火・準防火地域でカーポート】できる?規制の内容や対策を解説」の記事をご確認ください。
一方、母屋と物置の「あいだ」にも延焼ラインが引かれることがあります。ただし、母屋と物置の床面積を足して500㎡(約151坪)以内なら、2棟でまとめて1つの建物として扱われるため、あいだの延焼ラインは発生しません(建築基準法 第2条第6号)。
賃貸併用住宅などで500㎡を超える場合でも、物置が平屋建ての小さなもので、柱や壁が燃えない材料でできていれば、母屋側に延焼ラインは生じません。この場合、物置の扉や窓のほうに防火設備が必要になります。
出典:日本建築行政会議「建築物の防火避難規定の解説」
Q. 延焼ラインは緩和規定があると聞いたのですが?
A.延焼ラインには、以下のように条件付きで緩和が認められる場合があります。
- 防災上有効と認められるもの(公園や川など)に面する箇所
- 火元に対して角度が認められる場合
- 延焼ラインを遮るように袖壁を設置する場合
こうした緩和規定を上手に活用することで、防火性のある外壁や設備の設置を避けられる可能性があり、建築費の軽減やデザインの自由度アップにつなげられます。
関連記事:防火地域のハウスメーカー5つの選び方
まとめ│延焼ライン対策は施工実績が豊富なハウスメーカーに相談を

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防火地域・準防火地域で家を建てる際に規制対象となることが多い延焼ラインについて解説しました。
延焼ラインは万が一火災が発生したときに、火元に近い場所の窓や外壁を耐火性能の高い建材にすることで延焼の可能性を軽減するために設定されています。
東京23区内など、住宅が密集している地域で、特に受けやすい規制といえます。
建築費用の増加や外壁・窓に使用できる建材が限られるなどデメリットもありますが、火災に強い家を建てられるメリットもあります。
延焼ラインへの対応は、「緩和規定」をどこまで読み解けるかで費用とデザインの自由度が変わります。これこそが、ハウスメーカーの「経験」と「ノウハウ」が最も問われる部分です。
「この土地だと、防火窓はいくつ必要?」 「袖壁を使えば、どれくらいコストを抑えられる?」 「網なしのクリアな窓にしたい」
こうした具体的なご相談に対し、都内トップクラスの施工実績に裏打ちされた「最適な答え」をご提案します。
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