木造3階建ては建築基準法の制限が厳しい?構造計算・高さ制限などの基準を解説

木造3階建ては建築基準法の制限が厳しい?構造計算・高さ制限などの基準を解説

「木造3階建ては建築基準法の制限が厳しい」

都内で家を建てる計画がある方の中には、このような意見を目にした方もいるでしょう。

 

確かに木造3階建て住宅は2階建てよりも建築基準法の各種規制を受けますので、特に東京23区などの都市部で建築する場合は、設計・土地の購入前の段階で確認する必要があります。

 

そこで本記事では、木造3階建て住宅を建てる際に気をつけておきたい各種法令を紹介します。

場合によっては3階建てを建てられないケースもありますので、土地選びの段階から建築制限に注意する必要があります。

▶東京23区で建てた「木造3階建て」の施工事例

 

 

建築基準法で木造3階建てが受ける規制

木造3階建てを建築する場合は、建築基準法で各種制限を受けることとなります。

具体的に確認するべき制限は、以下の6つです。

  • 絶対高さ制限
  • 道路斜線制限・北側斜線制限
  • 日影規制
  • 構造計算による安全性の確認
  • 防火避難規定
  • 防火・準防火建築物の規定

絶対高さ制限

建物の高さを制限する「絶対高さ制限」

引用:江戸川区「どのくらいの高さまで建物を建てられますか?」

絶対高さ制限は、建築予定の土地が以下の3つの都市計画区域いずれかに該当する場合、建物の最高高さを10mまたは12m(自治体によって異なります)に制限する決まりです。

  • 第1種低層住居専用地域
  • 第2種低層住居専用地域
  • 田園住居地域

建築予定地が該当しているかは、市町村へ問い合わせるか自治体のホームページの都市計画図から確認できます。

関連記事:3階建ての高さは何メートル?4つの高さ制限も解説

道路斜線制限・北側斜線制限

道路と北側隣地の住環境を守る「道路斜線・北側斜線制限」

引用:クレバリーホーム「「道路斜線制限」「北側斜線制限」とは?」

道路斜線制限や北側斜線制限は道路や建物の良好な環境を確保するための決まりで、一定の基準に従って線を引き、線の中に建物を収めることが義務づけられます。

狭小地で家を建てる場合、敷地や空間を最大限に活用して建てたいのですが、斜線制限にかかることで建物の形が制限されることがあります。

日影規制

建物によって周囲に影ができる時間を制限する「日影規制」

引用:江戸川区「日影規制とはどのようなことですか?」

日影規制は、建物によって生じる影により周辺の居住環境が脅かされることを防ぐ決まりです。太陽光の動きをシミュレーションして、近隣の土地が日影に入る時間を一定以下に抑える必要があります。

対象となるのは10mを超える建物(第一種低層住居専用地域の場合、軒高7mを超える建物または、3階以上の建物)で、住居系用途地域など一定のエリアに含まれる土地です。

 

こうした高さに関する制限は、特に3階建て住宅を建てる場合に関係することがあります。

土地選びの時点でどの程度の高さまで建てられるのかを確認することが重要です。

都内では複数の規制がかかる場合もありますので、土地を最大限に有効活用されたい方は、クレバリーホーム東京までお気軽にご相談ください。

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構造計算による安全性の確認

詳細な構造計算が必要になる現行の基準(高さ13m・軒高9m)

引用:国土交通省「木造建築物等の構造計算の合理化」

木造住宅では、現行基準において最高高さ13m、かつ軒高が9mを超える場合に構造計算適合性判定を行う必要があります。

構造計算適合性判定は、建物の構造的な安全性を確認するための詳細な計算で、実施する場合は20万円前後の費用を要します。

高さの基準に満たない場合は、より簡易的で安価な安定性の確認でよいことから、費用を抑えたい場合は確認しておきたい規制です。

 

なお、国土交通省によると一般的な3階建て住宅の平均的な高さは12.9mと試算されていて、意識して高さを抑えなければ13mという高さを超える可能性があります。

関連記事:3階建ての高さは何メートル?4つの高さ制限も解説

改正法の施行後は詳細な構造計算が必要になる高さが16m以下に

引用:国土交通省「令和4年改正 建築基準法について」

なお、令和4年に建築基準法の改正が行われており、法律が施行された後は高さ16m以下までであれば簡易的な構造計算でも建築許可が下りるよう緩和される見込みです。

防火避難規定

2階建てであれば不要ですが、3階建て以上の住まいでは、防火避難規定も影響があります。

防火避難規定とは、万が一火災が発生したときに、住人が安全・迅速に逃げるために設けられた基準です。

以下の3つの基準に基づき設計する必要があります。

排煙計算火災時の煙を屋外に排出するために、一定以上の大きさの窓を設けるための規定。

参考:国土交通省「建設省告示第千四百三十六号」

非常用進入口の設置火災時に消防隊が救助・消火活動を行う目的で道路から建物に進入するために、一定以上の大きさの窓を設ける規定。

参考:国土交通省「建築基準法施行令 第百二十六条の六」

直通階段の設置火災時に1階へと迅速に下りるために、各階段の位置を隣接、または近くに配置することを義務付ける規定。

参考:国土交通省「建築基準法施行令 第百十七条・百二十条」

 

耐火・準耐火建築物の規定

建築予定地が防火・準防火地域に入っている場合は、3階建て住宅は耐火建築物または準耐火建築物にする必要があります。

耐火・準耐火建築物は、火災によって建物が倒壊することを防いだり、他の建物に延焼することを防ぐための規定です。

防火地域で耐火・準耐火建築物、防火構造に適合させる建物の判定図

引用:豊島区「準防火地域・新たな防火規制区域・防火地域について」

防火地域で100㎡を超える建物でも耐火建築物であれば「木造3階建て」が建てられます。建物の階数が高くなるほど火災に関連する規制は厳しくなります。

 

なお、準防火地域に3階建て住宅を建てる場合は「3階建て建築物の技術的基準」も確認してください。

準耐火建築物ほど厳しい規制ではありませんが、以下の基準の遵守が求められます。

  • 外壁・軒裏を防火構造とする
  • 屋根は不燃材料とする
  • 外壁の開口部に防火戸を取り付ける
  • 木造の柱・梁は一定以上の太さにする、または石膏ボードなどで覆う など

参考:建築基準法施行令「3階建て建築物の技術的基準」

木造3階建てを建てる3つのメリット

木造で3階建て住宅を建築するには、こうした各種法規制をクリアする必要があります。

ここであらためて、木造3階建て住宅を建てるメリットを確認しておきましょう。

狭小地でも十分な床面積を確保できる

木造3階建てにすることで、東京23区内など土地の取得価格が高く狭小地になりがちなエリアでも、十分な床面積を確保できます。

地下室・屋上のある3階建て木造住宅(東京都江東区)

【敷地13.47坪 】地下室・屋上のある3階建て木造住宅の事例を見る>>>

たとえば江東区に建てられた住まいは敷地面積13.47坪と比較的コンパクトな土地ですが、3階建て住宅にすることで28.13坪の延床面積を実現しています。

敷地面積に余裕がある場合でも、二世帯・三世帯住宅の場合は、ゆったりとした居住空間を確保しやすい3階建て住宅がおすすめです。

他の工法と比べて建築費用を抑えられる

同じ3階建てであっても、木造住宅を選択することで建築費用を抑えられることもメリットに挙げられます。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造でも3階建て住宅は建てられますが、材料費が高くなり大型のクレーンなども必要です。

一方で木造であれば小型のクレーンで施工可能で材料費も抑えられ、建築総額を大幅に抑えられる可能性があります。

鉄骨造・鉄筋コンクリート造と比較してCO2排出量が少ない

木造・鉄骨・鉄筋コンクリートの住宅一戸あたり炭素貯蔵量・材料製造時のCO2量の比較表

引用:林野庁「令和元年度 森林・林業白書」

鉄骨や鉄筋コンクリート造りと比較して、CO2の排出量が少ない点も、木造3階建ての大きなメリットです。

林野庁が試算した住宅一戸当たりの炭素貯蔵量と材料製造時のCO2排出量の比較を見ると、鉄骨・鉄筋コンクリート造いずれの住宅と比較しても環境への影響が少ないことが分かります。

住宅建築にもSDGsの考え方が求められる昨今、CO2排出量など地球環境への影響もハウスメーカー選びの選定基準に入れてみましょう。

木造3階建てを建てる2つのデメリットと対策

一方で木造3階建てを建てる際にはデメリットもあります。

余裕をもったプランを策定する

木造3階建て住宅は本記事で紹介した様々な規制を受ける可能性があります。

中には建築費用が増える方向に働くものもあります。

たとえば、一定以上の高さの3階建てにする場合は、構造計算自体に費用がかかり審査時も追加で費用が必要です。

また、防火・準防火建築物としての基準が厳しくなるほどに必要な費用は高くなります。

このことから、木造3階建て住宅を建てる際には、建築費用に余裕を持たせるとともにハウスメーカーによる適切な見積もりが重要になります。

動線を短くする

ホームエレベーター付き3階建て木造住宅の事例(東京都文京区)

【敷地11.34坪 】ホームエレベーター付き3階建て木造住宅の事例を見る>>>

木造3階建てを建てる場合、1階から3階まで階段を使用して上下する動線が長くなります。

洗濯などの家事動線や朝昼夜の生活動線を効率化するための間取りの工夫が必要です。

複数の機能をまとめる、縦の動線を縮めるなど、さまざまな3階建てならではの空間活用がポイントになります。

階段を建物の中心に配置する、ホームエレベーターを設けるなど、各種動線が短くなるように配慮した設計が重要になります。

関連記事:3階建ての部屋の使い方・家事楽動線をプロが徹底解説

まとめ│木造3階建ては建築基準法への対応で機能性が向上する

デッドスペースも造作家具で活用する木造3階建て住宅(東京都世田谷区)

【敷地11.34坪 】造作家具で空間を有効活用する木造3階建て住宅の事例を見る>>>

十分な床面積を確保しながらも建築費用を抑えられる木造3階建て住宅。

メリットが大きい建て方ではありますが、選択する場合は建築基準法の各種規制を確認しなければいけません。

 

絶対高さ制限や各種斜線制限にかかる場合は、規制で求められる線に建物の形を合わせる必要がありますし、場合によっては3階建て住宅を建てられないケースもあります。

また、木材はそのままでは耐火建築物として認められないことから、防火地域や準防火地域に入っている場合は耐火構造になるよう仕様をグレードアップさせる必要があるかもしれません。

 

このように、木造3階建ては2階建てと比べて多くの規制を受けることとなります。

各種規制をクリアして、なおかつ建築費用を抑えて、理想の間取りを実現するには、都市部で木造3階建てや多層階住宅の建築実績が豊富な業者を選ぶのがおすすめです。

東京23区内で注文住宅を建てる予定の方は、弊社クレバリーホーム東京までお気軽にご相談ください。

施工実績に裏打ちされた、快適な木造3階建て住宅を建てることをお約束致します。

床面積が不足する場合に選択肢に挙げられる「木造4階建て住宅」

▶狭小地で床面積が不足する場合の選択肢『木造4階建て』

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監修者情報

高坂 昇

高坂 昇ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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