二世帯住宅とは│建築基準法などでの定義があるのか解説します
二世帯住宅とは、親世帯と子世帯が一緒に暮らすために建てられた家のことをいいます。
ひと昔前までは親子二世帯が一緒に住む「同居」は一般的で、それに伴う住宅の仕様を、分けて考えられてはいませんでした。
しかし現在では二世帯同居の形に選択が広がり、お互いが快適に過ごせるスタイルが選べるようになっています。
そんな二世帯同居を快適に整える「二世帯住宅」とは、具体的にどのような定義があるのか詳しく見ていきましょう。
また二世帯住宅の型や、メリット・デメリットについてもまとめていきます。
二世帯住宅を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
- point -
- 「建築基準法」において二世帯住宅の定義があるのか解説します。
- 一般的に認知されている二世帯住宅と、減税措置などの要項についての違いを理解しておきましょう。
− contents −
◼ 二世帯住宅とは│建築基準法での定義があるのか
◼ 【二世帯住宅】3つの型をご紹介
◼ 二世帯住宅のメリット
◼ 二世帯住宅のデメリット
◼ まとめ
二世帯住宅とは│建築基準法での定義があるのか
▶吹き抜けで開放的なリビングが特徴。将来の二世帯を考えた工夫満載
まず「建築基準法」とは、建築物の敷地・構造・用途について定められた法律です。
これを守らずに建物を建ててしまうと、行政の指導により工事の停止、取り壊し、罰金などが科せられます。
その建築基準法において「二世帯住宅」に関する定義はありません。
建築基準法で二世帯住宅への定義がないのは「二世帯住宅」という言葉がハウスメーカーの商品名だからです。
1975年に発売された「二世帯住宅」は一般的に認知され、二世帯が同居する住宅全般を「二世帯住宅」と呼ぶようになりました。
この商品を販売しているハウスメーカーの研究所によると、二世帯住宅の定義は「キッチンが2つあり親子が独立した世帯として住まう住宅」とされていて、キッチンなど一部を共有する同居住宅とは区別されています。
しかし一般的には親子で同居する生活全般を「親子同居」、その住宅全般を「二世帯住宅」と認識されています。
では改めて二世帯住宅は、建築基準法でどのように区分されているのか見ていきましょう。
建築基準法では共同住宅・長屋・一戸建ての住宅と称される
建築基準法では、生計をわける家族が同じ建物に住む住宅を、その形状にわけて「専用住宅・共同住宅・長屋・一戸建て」と分類されます。
それぞれの定義を見ていきましょう。
- 共同住宅・・・2戸以上の住宅で、各住戸内に各々1以上の居室・台所・便所が必須。共用の廊下又は階段が必須
- 長屋・・・2戸以上の住宅で、共用部分が無いもの。 「棟割長屋」は、界壁を介して横に住戸が連続。 「重層長屋」は、界床を介して上下に連続
- 一戸建て・・・1戸の住宅には、1以上の居室・台所・便所が必須(風呂が無くても住戸)
(参考元:建築基準法施行規則別記様式による建築物用途一覧 )
共有の範囲や設備によって、区分されているようです。
二世帯住宅を新築して減税措置を受けられる条件
二世帯住宅は、固定資産税や不動産取得税の減税を受けることができます。
この減税措置を受けるためには、各地方自治体で定められた二世帯住宅としての要件を満たすことが必要です。
二世帯住宅の要件は、各地方自治体によって多少の違いがありますが、基本的には次のようなものがあげられます。
- 各世帯が玄関やドアなどで仕切られ、構造上の独立性があること
- 玄関や台所、トイレが各世帯にあり、専用部分だけで生活できる設備が整っていること
二世帯住宅として減税措置を受けるには、完全に独立した生活ができる環境を整える必要があるようです。
しかし二世帯が同居する形は、生活の全てを分離するものだけではなく、部分的に共有するスタイルも多くあります。
大きくは3つの型に分けられるので、それぞれの特徴をご覧ください。
【二世帯住宅】3つの型をご紹介
二世帯住宅の3つの型は、基本的に共有部分の違いでわけられます。
それぞれの特徴や、メリット・デメリットを理解しておきましょう。
完全分離型
完全分離型とは、玄関や水回りなどの設備や、生活のスペースを完全にわけた住宅です。
先述した減税措置の要件を満たす建築様式と考えられます。
完全分離型の特徴は、各世帯が独立していることからプライバシーが守られやすく、お互いの生活を尊重できるスタイルです。
二世帯住宅としての用途が必要なくなった場合には、賃貸としての利用がしやすいのも大きなメリットと言えるでしょう。
デメリットとしては、他の型と比較すると建築費用が高いことがあげられます。
部分共有型
部分共有型とは、玄関やリビング、水回りなど、どこか一部分だけを共有したスタイルです。
共有部分があるので、顔を合わせることも多くコミニュケーションは取りやすくなるでしょう。
子育てのサポートを受けやすくなり、逆に親世帯が困っているときには近くでサポートすることができます。
共有部分の利用方法や生活スタイルの違いから、トラブルなども起きやすいので、同居が始まる前にしっかりと話しあうことが大切です。
完全同居型
完全同居型とは、生活に必要な設備を全て共有するスタイルです。
一般住宅とほとんど変わらない仕様で、個人の部屋だけがプライベートスペースとなります。
親世帯が離別や死別によって一人の場合や、家に居る時間が多い妻側の親との同居にはおすすめです。
一緒に住んでいるという安心感を覚えやすく、家族である暖かみが感じられるでしょう。
関連記事:二世帯住宅のタイプ別│母一人と一緒に住む間取りを考える
二世帯住宅のメリット
次に二世帯住宅で生活をするメリットを見ていきましょう。
子育てのサポートを受けやすい
共働きのご家庭や、兄弟の多いご家庭であれば、子育てのサポートが必要な場面も多くあります。
- 子世帯の両親ともフルタイムの仕事をしているので、家で子供だけの時間ができてしまう
- 急な残業が入って、保育園のお迎えに間に合わない
- 下の子が風邪をひいたので、他の子に移らないように生活をわけたい
- 子どもがお熱が出たと学校から連絡が入ったけど、急に仕事を抜けられない
そんなときに親世帯が側にいてくれれば、助けてもらいやすくなります。
将来的な親の介護がしやすい
親に介護が必要になった場合、二世帯住宅であれば何かとサポートがしやすくなります。
食事の準備や掃除など、近くにいれば細かな対応も負担が少なくて済みます。
また近くにいることの安心感は何よりのメリット言えるでしょう。
建築費用や生活費の軽減
二世帯住宅の型にもよりますが、住宅を2棟建てることと比較すると建築費用が安くすみます。
さらに水道光熱費などは、基本料金がひとまとめにできるので、生活費の削減になるでしょう。
これまで会いに行くのに交通費がかかっていたご家族にとっては、大きな費用削減となります。
二世帯住宅のデメリット
▶【狭小、鉄骨造2世帯住宅】ご家族の「これがしたい!」を詰め込んだ家
二世帯住宅に同居すると「ストレスを感じる」「トラブルが増えた」など、聞いたことがあるかと思います。
その辺りが二世帯住宅の大きなデメリットと言えるでしょう。
プライバシーが守られにくい
二世帯住宅での同居は距離感が近くなるので、プライバシーが守られにくくなります。
玄関を共有していれば「帰りが遅かったね」「どこに行くの」と声を掛けられるだけでストレスに感じてしまうかもしれません。
食事の献立を聞かれたり、勝手に洗濯物を取り込まれたりと、お互いに悪気がなくても監視されているような感覚になりがちです。
同居を始める前に、一定のルールを決めておきましょう。
それでもトラブルは発生するので、同居している親世帯の実子である夫や妻に間に入ってもらって、その都度解決することが大切です。
生活スタイルの違いに配慮が必要
親世帯の生活スタイルと、子世帯の生活スタイルに違があるのは仕方ありません。
できるだけお互いの生活に配慮して、気持ちよく過ごせる環境を整えていきましょう。
生活スタイルの違いは、食事(調理)の時間帯や、お風呂を使う時間帯などにも影響を及ぼします。
さらに生活音への配慮も必要なので、間取りを決める際は特に寝室の位置を意識しましょう。
- 子世帯はお風呂に入る時間などが遅くなりがちなので、水回りと親世帯の寝室を遠ざける
- 子どもが元気に動き回るリビングの真下に、親世帯の寝室を作らない
また間取りで補えない部分は、住宅性能で補うことも検討しましょう。
遮音性の高い壁や床にすることで、生活スタイルの違いからくる「音」への負担を減らすことができます。
関連記事:二世帯住宅を建てるなら平屋?二階建て?違いと選び方を解説
まとめ
▶玄関1つ、水回り2つのコンパクト設計でもこだわりの二世帯住宅
建築基準法では二世帯住宅の区分がなく、共同住宅・長屋・一戸建ての住宅と称されます。
軽減措置を受けられる二世帯住宅としては、生活スペースや生活設備の完全な分離が要項として定められており、一般的に認知されている二世帯住宅からすると、少し幅が狭まる印象です。
しかし実際の所、二世帯住宅の形はそれぞれなので、生活スペースや設備の共有部分の違いを基に3つの型にわけられます。
それぞれのメリット・デメリットを理解して、どのスタイルが自分たち家族に最適なのか検討してみましょう。