狭小住宅でできる空間の活用方法
挟小住宅…と聞くと、狭い、生活しづらい空間を思い浮かべるかもしれません。
しかし、昔に比べデザインや空間活用の技術が発達し、狭小住宅は今や工夫次第で快適な生活をしやすい空間に変貌を遂げています。
今回は、狭小住宅の空間活用ポイントをまとめてご紹介します。
このコラムのポイント
・『狭小住宅』は、一般的には、約15〜20坪以下の土地に建てられた狭く小さな家のことです。利便性、税金の安さを求める方にとってはとても魅力的です。
・空間活用のポイントとして、動線の工夫、デッドスペースやスキップフロアの活用、吹き抜けの設置などが挙げられます。
・このコラムを読んでいただくことで、狭小住宅を建てる際の空間活用知識を身につけ、家づくりに活かすことができます。
利便性や税金の安さを考えた時に、選択肢として挙がる狭小住宅。魅力もありますが、広々と暮らしたい、狭さをあまり感じたくない、という方にとっては、なかなか一歩を踏み出せない選択なのかもしれません。
狭小住宅とは
『狭小住宅』は、一般的には、約15〜20坪以下の土地に建てられた狭く小さな家のことを指します。また、延床面積約70平米の一戸建てのことを指す場合もあります。実は、特に定義は決まっているわけではなく実際には曖昧なものです。狭い土地に建つ家が総じて、狭小住宅と言われています。
また、200平米以下の土地は『小規模住宅用地』に分類されます。これは固定資産税や都市計画税の軽減対象になります。
家を取得すると、固定資産税や都市計画税を支払い続けることになります。
税率は地域によって異なりますが、主に以下のような計算になります。
・固定資産税
・小規模住宅用地―1/6に減額した評価額×税率
・一般住宅用地(200平米を超す部分)―1/3に減額した評価額×税率
・都市計画税
・小規模住宅用地―1/3に減額した評価額×税率
・一般住宅用地(200平米を超す部分)―2/3に減額した評価額×税率
減額が大きい上、毎年の積み重ねとなるととても大きな額ですが、狭小住宅であればこれらの税金負担を毎年抑えることができます。
◼︎ 狭小住宅の魅力
狭小住宅の魅力は、経済的に見て土地代を抑えられることです。土地の面積が狭く、土地代を安く抑えることができます。狭小地は、土地柄建てる家に制約が多くなってしまうことが想定されるため、土地単価が安めに設定されている場合があります。これらをうまく活用することで、限られた予算の中で念願のマイホームを建てることができます。
また、都心部に住むことができるので、毎日の通勤にかかる移動時間、移動にかかる疲労も抑えることができ、時間と体力も有効活用することができます。
◼︎ 空間の工夫次第で快適さが実現
元々の土地の面積が狭いだけでなく、変形地だったり、住宅密集地にあったりするのが狭小地です。家を建築する際に苦労することは増えるかもしれませんが、利便性や思い描く暮らしを加味した結果、狭小住宅で家を建てるという決断をされる方は多いです。それだけでなく、都心部でも広さにこだわらなければマイホームを持てることから狭小住宅のニーズは増しています。設計や空間活用の工夫をすることで、狭小住宅の敷地を最大限に活かし、明るく広々と暮らせる家を建てることができます。
空間活用のポイント
では、快適な暮らしにつながる空間の活用方法をご紹介しましょう。
ポイント① 動線の工夫
動線を考えた設計は、その家での暮らしをより快適にすることができます。狭小住宅の場合、バスルームやトイレ、キッチンなどの水回りを、できるだけ近い位置にまとめて設置するのがポイントです。可能な限り、1つのフロアに家事の流れをまとめましょう。
水回りをまとめることで、設置の際の工事費を抑えることはもちろんですが、よく使用する場所をまとめることで家事動線が短く、移動が最小限になります。そうすることで、暮らしの中での負担を抑えることができます。
また、生活動線と家事動線を分けることも有効です。そうすることで、暮らしている人の動きがぶつかることなくスムーズに動くことができます。狭小住宅で生活動線と家事動線を分けるためには、ひとつの場所へたどり着くための扉や通路を幾つか設置する、間取りだけでなく家具の設置場所を工夫する、などの方法があります。
ポイント② デッドスペースを活用する
家の中には、デッドスペースが意外と多くあります。リビングや寝室内の、目に見える場所のデッドスペースを活用しようとすると、空間が狭くなってしまいます。しかしクローゼットの上部や階段の裏、冷蔵庫や洗濯機の上部など、普段は目に見えない場所を活かすと、空間を有効に活用することができます。
クローゼット上部に収納スペースにしたり、階段の裏にキッチンや書斎、トイレを設けたりすることができます。広々としたクローゼットを設けて収納スペースを確保したとしても、上部に手の届かない場所はどうしてもできてしまいます。収納スペースの確保と合わせて、デッドスペースの有効活用を行うことがポイントです。
ポイント③ 窓や吹き抜けを活かす
狭小住宅で、部屋数を増やす、階数を増やす、となるとどうしても壁の部分が多くなってしまいます。そうなると、どうしても閉鎖的な空間になってしまいます。そんな時に、明るさや開放感を演出してくれるのが吹抜けや窓です。
吹き抜けがあることで、縦の広がりができます。視界が抜け、開放感を感じることは空間にゆとりを生みます。また、窓を増やすことで空気の通りも良くなり部屋の明るさが増します。
住宅の構造上、窓を増やすのは難しい場合があるかもしれませんが、狭小住宅で得にくい横の広がりをカバーしてくれる窓や吹き抜けは、うまく取り入れていきましょう。
ポイント④ スキップフロアの活用
スキップフロアとは、床の一部に高低差を設け、数段の階段でつなげるもののことを言います。スキップフロアを作ることで、フロア同士が半階ごとにつながれて実際の面積以上に、空間に奥行きをもたらすことができます。
視界を縦に広げ、空間に奥行きをもたらすだけでなく、新たな居住スペースや収納スペースも生み出してくれます。1.5階や2.5階を作ることで、段差そのものが空間を区切る役割を果たしてくれます。段差が高ければ高いほど、スキップフロアはほぼ視界に入ることなく空間を仕切ってくれます。
生まれた空間は、子どもの遊び場や書斎、収納スペースにするという選択ができます。不意に生まれた空間がうまく活用されることは狭小住宅にとって大きなメリットです。
また、スキップフロアを採用することで廊下を設置する必要がなくなります。廊下を使わずとも、階段と各層の一部を通過することで移動ができます。廊下の幅は一般的に80センチとされていますが、廊下を省きその分居室スペースなどに活用し、部屋を広くすることができます。
狭小住宅でのライフスタイルを確立
狭小住宅も、工夫次第で空間をしっかりと活用し、広さを感じながら快適な生活を送ることができます。
快適さを追求しながら、試行錯誤を繰り返し建てられた家に住む喜びは、建てた人にしかわからないもの、何にも代えがたいものです。
希望するカタチを追求して造り上げていくマイホームが、家族のスタイルや気持ちに寄り添ったものとなるといいですね。
空間を有効活用した狭小住宅で暮らしている方は多くいらっしゃいます。
建築実例をご参考ください。